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[ 2017/03/21 | 産業技術総合研究所(AIST) | 中央省庁 | 東京都 | 千代田区 | 非上場・外資系企業 ]

脂肪を燃焼させる褐色脂肪組織を簡便な装置でリアルタイム可視化-メタボリックシンドローム治療薬開発の加速に期待-



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発表・掲載日:2017/03/21

脂肪を燃焼させる褐色脂肪組織を簡便な装置でリアルタイム可視化

-メタボリックシンドローム治療薬開発の加速に期待-

ポイント

  • 特殊なポリマー分散剤で被覆したカーボンナノチューブを用いて褐色脂肪組織を選択的造影
  • 生体透過性の高い近赤外光で褐色脂肪組織をリアルタイムで高解像度高輝度蛍光造影
  • メタボリックシンドロームの予防・治療法の開発への大きな貢献が期待



概要

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)ナノ材料研究部門【研究部門長 佐々木 毅】湯田坂 雅子 招へい研究員、片浦 弘道 首席研究員は、国立研究開発法人 国立国際医療研究センター【理事長 春日 雅人】研究所 疾患制御研究部 幹細胞治療開発研究室 佐伯 久美子 室長、国立大学法人 北海道大学大学院獣医学研究科 比較形態機能学講座 岡松 優子 講師、国立大学法人 東京大学(以下「東大」という)大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 石原 一彦 教授と共同で、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をプローブとして用いた褐色脂肪組織(BAT)の近赤外蛍光造影法を開発した。

 東大が開発した生体親和性の高いMPCポリマーの一種であるPMBを分散剤として利用し、半導体型SWCNTの表面をコーティングするとマウスの褐色脂肪組織に選択的に沈着する。それを近赤外蛍光イメージングのプローブとして用いることで、褐色脂肪組織が造影できる。肥満やそれに関連する疾病の発症を予防・治療するためのターゲットとして期待されている褐色脂肪組織を、従来に比べて、極めて安価で高解像度に造影可能なので、メタボリックシンドロームの予防・治療法の開発への大きな貢献が期待される。

 なお、この技術の詳細は、2017年3月20日(英国現地時間)にScientific Reportsにオンライン掲載される。

PMBでコーティングしたSWCNTの褐色脂肪組織への沈着の模式図(左)と肩甲骨間の褐色脂肪組織(BAT)を造影したマウス



開発の社会的背景

 最近、メタボリックシンドロームによる健康障害が急増する中、脂肪を燃焼させる組織である褐色脂肪組織に関する研究が進んでいる。特に褐色脂肪組織の活性化が期待されており、未知な部分が多い褐色脂肪細胞に関する基礎研究と、その活性化手法の研究が精力的に行われている。そうした研究では、動物実験で褐色脂肪組織を非侵襲で観察することが、解剖による動物への苦痛を軽減し、使用する動物数を減らすという点からも重要である。しかし、これまでそれができる手法は、大型で高価な、放射性同位元素を用いるPET-CTだけであった。

 一方、生体透過性の高い近赤外光を用いて小動物の体内を非侵襲的に造影する手法があり、近赤外光により高効率で発光する半導体型SWCNTが蛍光材料として注目されている。しかし、特定の生体組織を選択的に造影する技術はなく、血管造影や臓器の造影にだけ使われていた。

研究の経緯

 本研究グループでは、SWCNTの産業応用を目指し、SWCNTの合成と分離精製技術の開発に注力してきた。これまでに、蛍光の発光効率が高いSWCNTを効率良く分離する技術を開発し、従来の100倍の感度でマウスの血管を造影できることを示した。今回、SWCNTの表面被覆剤を用いてマウスの褐色脂肪組織の造影ができる技術の開発に取り組んだ。

 なお、本研究開発は、独立行政法人 日本学術振興会 基盤研究(A)「カーボンナノチューブによる褐色脂肪組織の近赤外光造影(平成28~30年度)」、基盤研究(S)「完全制御カーボンナノチューブの物性と応用(平成25~29年度)」による支援を受けて行った。

研究の内容

 今回、生体親和性の高い分散剤のMPCポリマーの一種であるPMBで表面を被覆したSWCNT(PMB-SWCNT)が、マウスの褐色脂肪組織に選択的に沈着することを見出した。これは、まずPMB-SWCNTが血中にあるアポリポタンパク質を取り込み、血流によって体内を循環するうちに、褐色脂肪組織の毛細血管内皮細胞にあるアポリポタンパク質受容体に選択的に沈着するためである(図1)。沈着したPMB-SWCNTをプローブとして近赤外蛍光イメージングを行うことで、褐色脂肪組織を選択的に造影できる。また、SWCNTには発光効率の高い半導体型SWCNTを高純度に分離精製して用いたため高感度であり、少量のPMB-SWCNTで鮮明な近赤外蛍光イメージングができ、生体への負荷を抑えることができる。

図1 PMB-SWCNTの褐色脂肪組織への沈着の模式図
PMB-SWCNTが血中のアポリポタンパク質を捕らえ褐色脂肪組織の毛細血管内皮細胞の受容体に結合して沈着する。

 今回の技術では、波長730 nmの高輝度LED光をマウス全体に照射して、PMB-SWCNTが発光する蛍光のうち1000 nm以上の波長の近赤外光だけを近赤外カメラでイメージングする(図2左)。PMB-SWCNTをマウスの尾の静脈に投与し、近赤外蛍光イメージングを行うとすぐに褐色脂肪組織が鮮明に造影されはじめる。図2右には、3時間後のイメージング結果を示している。このように、従来に比べて極めて簡便な装置で褐色脂肪組織の選択的な造影が高感度、高解像度で行え、安価にマウスの褐色脂肪組織を非侵襲で観察できるようになった。また、リアルタイム観察が可能であるため、蛍光染色された褐色脂肪組織の選択採取が可能である。さらに、採取した組織の蛍光顕微鏡観察も可能であり(図3)、褐色脂肪組織の研究、特に活性化手法の研究への貢献が期待される。

図2 マウス撮影装置(左)とPMB-SWCNTを投与後3時間のマウスの近赤外蛍光イメージング像(右)
PMB-SWCNTが肩甲骨間部の褐色脂肪組織(BAT)に沈着し、SWCNTの発光によりBATが鮮明に造影されている。

図3 SWCNTの蛍光を赤色に変換した、褐色脂肪組織の近赤外蛍光顕微鏡写真
SWCNTが毛細血管にあることがわかる。免疫染色などと組み合わせることにより、SWCNTは毛細血管内皮細胞内にあることが判明している。

今後の予定

 今後はメタボリックシンドロームの予防・治療法研究の動物実験で、PMB-SWCNTが活用されることを目指して、PMB-SWCNTのサンプル提供を進めるとともに、共同研究を進めていく。



用語の説明

◆単層カーボンナノチューブ
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は炭素原子からなる、直径0.7~4 nm(1ナノメートル:10億分の1メートル)程度の筒で、黒鉛と同じく、6角形のネットワークによってできている。6角形の並び方の違いで、半導体的性質を示したり、金属的性質を示したりする。金属型と半導体型は、直径がほぼ同じであっても、全く異なった光吸収スペクトルを示すことが知られている。特に、1 nm程度の直径の半導体型SWCNTは、生体透過性の高い近赤外光の蛍光を発する希な素材であり、小動物の血管造影などに利用されている。[参照元へ戻る]
◆褐色脂肪組織(BAT)
褐色脂肪組織(Brown Adipose Tissue: BAT)は、脂肪を燃焼させて熱を産生する機能を持つため、肥満やそれに関連する病の発症を予防・治療するためのターゲットとして期待され、近年盛んに研究されている。褐色脂肪細胞やベージュ細胞といった熱産生脂肪細胞は体内の特定の場所に局在し、独特の組織を形成する。BATは、げっ歯類では肩甲骨間部などに、ヒトでは頸部・腋窩・傍椎体部などに局在する。しかし、BATの分布や形状を非侵襲的に見る手段は少ない。マウスではコンピューター断層撮影法(CT)を用いた方法が、ヒトでは陽電子放射断層撮影(PET)とCTを組み合わせた方法(PET-CT)が適用されているが、いずれも選択性や感度の点で課題が残されている。また高額な機器を使用するための経済的問題、検査対象への放射線被爆の問題などの課題がある。一方、簡易な光学的なBAT検出法も提案されているが鮮明度に課題が残っている。[参照元へ戻る]
◆近赤外光蛍光造影
700~1600 nmの波長の光は近赤外光と呼ばれていて、赤外光と可視光の間の波長領域となっている。この波長領域の光は生体透過性が高く、検査などに役立つと考えられているにもかかわらず、この波長領域で発光する物質がほとんどなかったため、発光による体内造影技術が発展してこなかった。最近はナノ粒子開発が進み、近赤外領域に発光を持つ物質も知られるようになったが、カドミウムなど有害物質を使う点が問題である。SWCNTは、数少ない近赤外蛍光を発する物質の一つであり、また、炭素だけからなるため、有害重金属を用いたものに比べて毒性が低く、近赤外蛍光による動物体内造影に適している。[参照元へ戻る]
◆MPCポリマー、PMB
MPC(2-Methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)ポリマーは水溶性ポリマーの一種であり、アクリル樹脂と同等のメタクリル酸骨格を有し、側鎖に代表的なリン脂質の極性基であるホスホリルコリン(PC)基が結合している。PMB(poly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine-co-n-butyl methacrylate))はMPCポリマーに、さらにアルキル基が疎水性の側鎖として結合されたものである。いずれもPC基があるため生体親和性を持つ。PMBで各種材料(プラスチック、ガラス、セラミックス、金属など)の表面をコーティングすると、細胞膜類似構造が形成される。そのため、生体内で用いても血液凝固や免疫反応を抑制し、また、タンパクの付着・変性を抑制することができる。この特性により、医療機器の表面コーティングに応用されている。
http://www.mpc.t.u-tokyo.ac.jp/research.html [参照元へ戻る]
◆PET-CT
グルコースの一部を陽電子放出核種で置換した分子を体内に注入し、陽電子が消滅する際に放射されるガンマ線を検出して造影するPET(Positron Emission Tomography)とCT(X線コンピュータ断層撮影)を組み合わせた造影検査方法。グルコースの滞留する部分から選択的にガンマ線が放出されることを利用し、主としてガンの診断に用いられるが、褐色脂肪細胞の造影も可能である。PETの解像度が低いため、解像度の高いCTと組み合わせることで、全体の解像度を向上させている。[参照元へ戻る]




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